昨日のおはなし

 だいたい有名人が亡くなって、葬式に行く一般人の気持ちっていうのは全く理解できないと思っていたのですが、清志郎が亡くなったというのを聞いた時には普通に、ああ葬式行くべきだよなと思った自分が居ました。昨日は仕事だったので、終わったらちょいと行こうかねと弟と話していたのですが、どうやら青山葬儀所は5時間待ちだとか大変な事になっているようで、ちょいと気楽に行ける感じではなくて、残念だけど断念だね、そのうちお墓参りでもいくかねという結論に達しました。。
 そして仕事の帰りしな、ガソリンスタンドで給油をしているときに、やっぱりちょっと様子を見に行ってみようと思い立ちまして一人で車を青山へと走らせたのです。。昼間のニュース映像で見たほどではないものの、まだまだ人は沢山おりました。葬儀所の近くの信号にて赤信号で停車しておりますと、隣に停車したボルボに乗った外国人(南米系)が大変驚いた様子で「ヘイ、コノサワギワナニゴトデスカ?」と英語で聞いてきたので「清志郎の葬式だよ」と日本語で答えました。外人は「Oh!ワタシエイゴシカワカリマセーン!ソウシキ??キヨシロ??」と英語で言っておりましたが「そ・う・し・き」とゆっくりと日本語で言っておきました。なんだかそのやりとりが面白くて、しんみりとしていた気持ちが少し晴れた気がしました。そして葬儀所の前に車が差し掛かったときにやっぱり中に入るのは違うんじゃないかという風な気持ちが湧き上がってきました。お礼を言うとかお別れを言うとか…そういうのはなんだか違うと、うまいことその理由は言えませんがとにかく違うんじゃないかと思いまして、そのまま通り過ぎました。。ただ、清志郎が本当に死んでしまったのだという事実がそこで確認できた気がしまして、一週間なんとも気の置き場がないような感じだったのが腑に落ちたといいますか、そんな感じでした。。
 清志郎はもう燃やされてしまって、もはや少しの骨と灰と空気中に拡散してしまった二酸化炭素になってしまったのです。僕に音楽というものやロックンロールというものを吹き込んでくれたり、ギターを買いに行くきっかけを作ったり、バンドをやったり曲や歌詞をつくる原動力になったり、勇気を出させてくれたり、そういったものをもたらしたのは元をただせば骨と灰と二酸化炭素なんだということがとても不思議に思いながら「シングルマン」を聴きつつ家に帰りました。空はすこし曇り気味で星は見えなかったけれども月だけはまんまるく光っていて、「らしいな」とおもいました。。